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2014年1月27日 (月)

体験に基づく知識

1box for 2trees & 20ha project あずまです。

2011年5月9日に、インドネシアの森林修復再生プロジェクトを開始する準備のために、インドネシア スマトラ島ベンカリス地区のギアム・シアック・ケチル-ブキット・バツ保護区のプロジェクト対象地へ行きました。

候補地の視察前に、対象地域のの管理責任を持つ地方行政機関を現地パートナーとともに訪問しました。彼らとの打ち合わせの後に、当時のその地方行政機関のトップとともに対象地へクルマで移動しました。

保護区の森林修復に取り組むにあたっては、土地の所有者、権利者やその他ステークホルダーとの合意を取らなくてはなりません。
合意を取るためには、事前の説明や理解が必要です。
インドネシアの土地には、法で定められた所有者以外にも、慣習的な土地所有があります。
わかりやすく言うと、「ここは前から、私の土地です。」という宣言です。

プロジェクト候補地に向かう途中で、何人かのひととすれ違いました。
森の中にある、乾季には枯れてしまう湖のほとりにある学校の広場にクルマを停めると、どんどんとひとが集まってきました。
プロジェクトの対象地において、植樹やその後の維持管理に協力してもらう地域コミュニティのようでした。
私たちの来訪を子供たちや女性が歓迎してくれている様子でしたが、しばらくすると状況が変わってきました。

それまで見当たらなかった、男性がどんどんと集まってきて、われわれを取り囲み、集会のようになってきました。行政官も来ているということを知っていて、地域住民と行政との公開質問会のようになってきたのです。
外国人である我々は、かなり居づらい雰囲気になり、ある程度時間が経過したところで、その場を退散しました。

その土地で、地域住民と協力し合って、森林を修復し、森の利用と保全の両立を目指そうと行政と現地パートナーとの協力により、合意されていたはずでした。

しかしどうやら、行政機関と外国人(私たちニッポンジン)が実際に来たのを見て、「ここから追い出される」つまり、土地を奪われると感じたようです。
その土地の先住民ではなく、彼らは移民であったことも、原因なのかもしれません。
温暖な気候から、土地が作物を育て、金を生むのがインドネシアです。

その土地には、換金作物としてインドネシアでも人気の油やしが既に植えられており、収入が油やしより多く見込めない森林の修復にはそもそも興味がなかったのかもしれません。

プロジェクト候補地として挙げられていたその場所は、採用が見送られ、別の場所が選定されました。
そこでも、結果として計画していた規模の植樹は完了しましたが、まだ数々の課題を抱えています。
林業のプロフェッショナル、海外協力のプロフェッショナルも苦労するアジアにおける森林修復再生に、ド素人である企業がチャレンジすることは無謀と思えますが、活動を通じて様々な実情が見えてきます。

土地を巡る紛争は、インドネシアでは当たり前だ、どこにでもあることだから仕方ないのだという主張だけでは足りません。どうやって、土地や権利を巡る開発と地域の衝突を未然に防ぐか、起きた衝突をどうやって解決できるのか、解決後もきちんとフォローができているかなどを理解し、必要な改善を実施することが大切だと考えています。
その手順のひとつが、FPIC(Free, prior and informed consent:自由で事前の、十分な情報を与えられた上での合意)です。
先住民族に事業が影響を与える時に議論となるようで、環境NGOであるFoEジャパンの資料によると下記の解説があります。

『FPICの重要性は、影響を受ける先住民族に協議(伝える/議論する)すれば、強制的に事業を進めてもいいということではなく、住民が納得しなくてはいけないということ。』

途上国、先住民族での話題のように聞こえますが、この「自由で事前の、十分な情報を与えられた上での合意」は私たちの普段の仕事や生活にも必要とされる手順でしょう。
わたしたちの国、身の回りでも、必ずこのFPICの手順がないとかなりの確立で障害が発生します。これを実行することはとても難しいことなので、飛ばしてしまうこともあります。

サプライチェインを通じて、課題を解決することが求められています。
お客様には、良いものを提供する購買代理人としての役割が求められます。
その一方で、サプライチェインの上流に向けては、課題の本質を捉え、解決のためにすべての関係者が協力しあうことが必要です。

オフィスでインターネットを使って調べものをしても、所詮は、他人の目と耳。
今年は、昨年までと違った一年になると思われます。

We are on the ground.
Shunichiro AZUMA in Tokyo

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